カフカ「流刑地にて」から溢れ出したとしか思えない機械音

「《正義をなせ!》とあるのです」
将校はくり返した。
「なるほど」
と、旅行家が言った。
「たぶん、そう書いてあるのでしょう」
「それで結構」
(カフカ「流刑地にて」池内紀・訳 『カフカ小説全集4 変身ほか』(白水社)より)

こんにちは。正義をなしていますか?野村です。

もし、なしているのであれば、それはきっと結構なことなのでしょう。

白水社『カフカ小説全集4 変身ほか』

以前、フランツ・カフカの中編小説「変身」についてちょっとだけ触れました。

高橋源一郎『13日間で「名文」を書けるようになる方法』を読みました
野村です。高橋源一郎『13日間で「名文」を書けるようになる方法』を読みました。タイトルから予想した内容とは違っていたけど、それ以上の収穫を得ましたよ。

なので「変身」を再読するために図書館から借りてきたのですよ。
『カフカ小説全集4 変身ほか』(白水社)。内容は短編集。
新聞・雑誌に発表された単行本未収録の作品も本書に収まっています。

高橋源一郎氏が言うところの「一人きりの国」が描かれているのか確認すべく「変身」を読み返したのだけど、面白くて確認どころじゃなかった。
つくづく自分は目的を決めて読むことが下手だな、と思った次第。

カフカ「流刑地にて」

さて、本題です。

今回紹介するのは「変身」ではなく「流刑地にて」。1914に執筆、1919年に発表された短編小説です。
先ほど紹介した『カフカ小説全集4 変身ほか』に収録されています。

ある旅行家が滞在先で処刑の立ち合いに招かれ、執行人である将校から処刑機械やその開発者である前司令官についての説明を延々と聞かされる、というお話。

この機械、いわば全自動。ただし、全ての行程を終えるまでに12時間もかかる。
そんな長い時間かけて何をするのかというと、罪状を囚人の身体に針で刻み付けるのです。少しずつ、次第に深く。
囚人には自身の罪状を告げられることはなく、体をもって知るとのこと。

なんというか、もう、むごい、の一言。

フランク・ザッパ「クロムメッキのメガホン」

「流刑地にて」を初めて読んだのは、もう随分と前のこと。
フランク・ザッパの3枚目と4枚目のアルバムの2in1『We’re Only in it for the Money/Lumpy Gravy』に「流刑地にて」のブックレットが付いていたのです。

ちなみにこのCDは廃盤。現在普通に売られている単体アルバムには付録が付いていません。たぶん。

なぜ付録が付いていたかというと、ザッパは『We’re Only in it for the Money』収録の楽曲「The Chrome Plated Megaphone of Destiny(邦題:クロムメッキのメガホン)」について、以下の指示を出しているからです。

「カフカ『流刑地にて』を読んでから聴け、読みながら聴くな」

この忠誠は何だろう?

この「クロムメッキのメガホン」、ジャンルでいえば現代音楽。
電子音、ピアノ、パーカッション、笑い声、ギターなどから構成されています。
歌詞はないけど、笑い声の合間に「arbitrary(任意)」という意味深なセリフが挟まれていたりする。

これがもう、「流刑地にて」の世界観そのまんま。
きしみ立つ機械の影から将校がいだく前司令官への陶酔が響いてきそう。

カフカは1924年没。執筆時はナチスの台頭を見てないはず。
よくこんな作品が書けたもんだと感心したもんです。

そして、注意書きの指示通り、「流刑地にて」を読んでから「クロムメッキのメガホン」を聴いた当時の僕のザッパへの忠誠は一体何だろう?

てなわけで今回はこれにて。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

野村 野村のプロフィール
枕は高いほうがいい。高いほうが本を読みやすいのですよ。なので広めのタオルケットを何重にも折りたたんでその上に枕を載せてその上に頭を載せてたりする。twitterやってますFacebookもやってます