ゼノンから超弦まで(松井孝典『文明は〈見えない世界〉がつくる』)

神秘主義は文明のために衰退し去るものではない。寧ろ文明は神秘主義に長足の進歩を与へるものである。
(芥川龍之介『侏儒の言葉』 より)

こんにちは。長足の進歩を与へてますか?野村です。

ここで芥川が神秘主義と呼んでいるのは「確認もせずに信じること」全般。だと思う。
その意味で言えば、たしかに現代人は神秘主義の民ですな。

「数」の概念は柔軟

というわけで、松井孝典『文明は〈見えない世界〉がつくる (岩波新書)』の読書日記です。

新書というコンパクトな媒体とは思えない読後感。
「〈見えない世界〉の追求」という切り口で科学史と宇宙論を振り返る本です。

〈見える世界〉には裏があります。それは〈見えない世界〉。
人間には〈見えない世界〉を知覚できません。なので数学の言葉で記述する。
でも数式って、あらゆる物理現象を捉えられるのだろか?

と、そんな疑問を持ったことがあるのだけど、意外と「数」は柔軟なものです。
自然数、整数、無理数、虚数などと概念を拡張しながら進展してきました。
今では「グラスマン数」というものもあるとか。掛け合わせるとゼロになるような数。
グラスマン数を座標に用いた空間モデルは超弦理論に欠かせないとのこと。

面白い。でもそんな空間、どうやって確認するんだろ?

信じる理由はまったくない

たびたび本書の中で目にする名前が「パルメニデス」と「ゼノン」。
感覚を排除し、理性を重んじた古代ギリシャの哲学者とその弟子です。

パルメニデスは「生成も消滅も、変化も運動も錯覚にすぎない」と主張します。
そしてゼノンは、師の哲学を引き継ぎ、独自の論法で補強しました。その成果が「ゼノンのパラドックス」。

後世の数学者・物理学者は、このパラドックスに挑みました。
僕も中学生の頃に挑んだものです。無謀だったけど。

本書によれば、この挑戦は現代になってようやく終わりをむかえた、とのこと。
そして現代における「過激な答え」を紹介しています。それは

運動の数学的な時空表現において、任意に小さな空間と時間の間隔に物理的な意味があると信じる理由はまったくない

というのもの。素敵!
ってことは「小さな空間と時間の間隔に物理的な意味がある」と信じることがすでに神秘主義だったのか。

てなわけで今回はこれにて。

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枕は高いほうがいい。高いほうが本を読みやすいのですよ。なので広めのタオルケットを何重にも折りたたんでその上に枕を載せてその上に頭を載せてたりする。twitterやってますFacebookもやってます