稲垣足穂「電気の敵」で幻視する「物質たちの生存を賭けた戦い」

この一遊星上に過ぎ去った人類の歴史は、実はこの瞬間に引き起こされた幻影にすぎなかったのでないか!
(稲垣足穂「電気の敵」 筑摩書房 『稲垣足穂全集2』所収 より)

こんにちは。電気料金を払ってますか?野村です。

今回紹介するのは、グロテスクかつ官能的な、宇宙の終焉のスケッチ。
実際に見た夢をモチーフにしているそうです。

物質世界の電気料金

というわけで、作家・稲垣足穂が1932年に発表した短編小説「電気の敵」の紹介です。
稲垣足穂全集〈第2巻〉ヰタ・マキニカリス』という短篇集に収録されてます。

前代未聞の気温上昇、巨大化する植物、なだれ出す星座、おだやかに霧散する月、配電盤から噴き漏れる火花、肌をすり寄せる妹。

もうなんだかわかりません。

わからないといえば、このタイトルが謎。
「電気の敵」なる言葉が何を指すのか明らかじゃないのです。
つきつめようとすると「そもそも電気って何?」って疑問に行き当たる。
でも、電気の正体を正面から考えたところで埒があかない。

なので、電気のない世界を想像してみたのですよ。
それは物体のない世界。
電子や陽子が電荷を持たなければ、原子が成立しませんからね。

この作品、気候や植物の異変という部分から、技術社会を警告していると捉える人もいるかも知れない。
だけどそんな難しいものじゃない。もっと単純。
この作品が描くのは「物質たちによる生存を賭けた戦い」です。

実際に経験あるけど、料金を払わなければ電気は止められます。
それでは、物質世界の電気料金は誰が何をもって支払っているのだろう?

てなわけで今回はこれにて。

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枕は高いほうがいい。高いほうが本を読みやすいのですよ。なので広めのタオルケットを何重にも折りたたんでその上に枕を載せてその上に頭を載せてたりする。