こんにちは。化学は得意ですか?野村です。
僕は苦手です。元素周期表が全然覚えられない。「すいへーりーべー」ってやつ。
もっと昔に生まれていれば、「木」「火」「土」「金」「水」の5元素だけ覚えればよかったのにね。
「面倒な時代に生まれたなあ」とボヤいてたもんだ。
さて本題です。
今回紹介するのは、アルジャノン・ブラックウッドという作家が1910年に発表した小説『人間和声』です。
一風変わった求人広告に応募した主人公は、その試用期間中、求人主の持つ神秘思想とカリスマ性に引き込まれていく、というお話。
求人主は元聖職者であり、マッド・サイエンティストならぬマッド・オカルティスト。
ヒロインも登場します。恋愛パートもあったりして、わりかしエンターテインメント。
でも見どころは、この作者の着想と表現力です。
「楽音」、「和声」、「名前」が紡ぐ宇宙の秘密。それを希求する求人主の熱狂がギシギシ伝わってくる。
「物の特質は」聖職者は雷の轟くような声で言った。「君にももうわかったろうが、『それをつくった“音”の圧し消された発声』にすぎない。物自体がその名前なんだ」
(ブラックウッド『人間和声』 光文社古典新訳文庫 南條竹則・訳 より)
この引用内の「名前」というのは、いわゆる名詞とか固有名詞のようなものじゃありません。
物語の中で「真の内なる名前」と呼ばれる何か、という他ない。
一応、名前ではあるので、唱えることも可能だったりする。
しかし「物自体」と「名前」が同一ってどういうことだろ?無茶苦茶だけど興味深い。
うんと子供の頃、原子に興味があったのですよ。
物質を分割していくと、最終的に何になるのか知りたかった。
できることなら、当時の自分に「音の凝固したものが『物質』なのだよ」と教えてみたい。
たぶん「ふざけんな!」とか言いそうだけど、少しは情緒のようなものを感じてくれる気がする。
てなわけで今回はこれにて。