人は誰しもこの世で孤独だ。真鍮の塔に閉じ込められていて、他者とは合図でしか意志を通じ合えない。
(モーム『月と六ペンス』土屋政雄・訳 光文社古典新訳文庫 より)
こんにちは。為替をチェックしてますか?野村です。
googleで調べたら、1ポンドが150円ほどでした。
1ポンド=100ペンスだから、6ペンスは9円程度。
20世紀初頭の6ペンスの価値は分からないけど、月と並べるような額なのだろうか?
モーム『月と六ペンス』
今回紹介するのは『月と六ペンス』。
イギリスの作家、ウィリアム・サマセット・モームが1919年に発表した小説です。
この小説、タイトルは以前から強く印象に残っていたのだけど、手に取ることはなかったのですよ。
つい最近、読書好きの人のツイッターを見て回るうちに「ゴーギャンをモデルにした物語」ということを知り、図書館で借りてきました。
書かれていなかったこと
ゴーギャンというのはフランスの画家です。ポスト印象派。
ゴッホと共同生活をしていたことでも有名です。
ゴッホが自分の耳を切った事件がありまして、その原因に大きく関わっていたと言われてます。
なので、本書にはゴッホとの関係について書かれているのじゃないかと期待したのです。
だけど、ゴッホをモデルにした人物は登場しませんでした。残念。
描かれていたこと
主人公は若い作家。作者であるモームの分身でいいはず。
彼とチャールズ・ストリックランドという男との関りと半生を描いた物語です。
このストリックランドのモデルがゴーギャンになります。
このストリックランド、ものすごく身勝手、かつ容赦のない男なのですよ。
周囲の人間はことごとく振り回されます。
その結果、人として許されない事件にまで発展するのだけど、本人は何食わぬ顔。
ここまでの悪人を描いたモームという作家の感性を疑いかけたりもしました。
でも、真正の芸術家ってこんなもんなのかも知れないな。
勝敗の行方は?
この小説の見どころをひとつ挙げるとすれば、やはり主人公が初めてストリックランドの絵を見る場面です。
作品を30点ほど見せられた後、とにかく主人公は考える。
この記事の冒頭で引用した文章は、その中の一部です。
文庫本にして4ページほど考え、ようやく言葉を発し、短い会話を挟み、また2ページほど考える。
このシーン、いわば作家と画家の対決と言っていい。一触即発。まるで西部劇。
そして、考えがまとまった主人公の長ゼリフ。勝敗の行方は?……読んでからのお楽しみ!
てなわけで今回はこれにて。