蜆川は、埋められながらそっと目を閉じるその刹那、200年前の二人の物語を、しみじみ思い出していたのかもしれない。
(本田創/高山英男/吉村生/三上たつお『はじめての暗渠散歩 水のない水辺をあるく』ちくま文庫 より)
こんにちは。文庫にも各社ごとのカラーがありますよね?野村です。
ちくま文庫にはちくま文庫のカラーがあります。
なんだか久々にちくま文庫らしい文庫を買いました。
すっごく満足です。
川だった頃の面影
今回紹介するのは、本田創/高山英男/吉村生/三上たつお『はじめての暗渠散歩 水のない水辺をあるく』(ちくま文庫)。
暗渠(あんきょ)を簡単に説明するならば、「かつて川だった道」。で、いいのかな?
川が埋められてしまう場合もあるし、フタをしただけの場合もある。
そんな「ワケありの道」を愛し、地図を片手に日夜さすらう人たちがいる。
少し驚き、また、羨ましく思いました。
かつて川だった頃の面影を見つけては、想像力を膨らませる。
そういった風情の感じ方を誰から教わることなく、自分で培ってきたことと思います。
夏目漱石『三四郎』で主人公とヒロインが小川のほとりを歩く場面があるのだけど、この川は藍染川といって、現在は暗渠となっているとのこと。
暗渠という存在を知らなければ、「消えてしまった川」として見過ごしてしまいそう。
文学の聖地巡礼の幅が広がりますな。
あと関心したのは、夜の暗渠の写真。
暗渠って、もとが川だっただけに曲がりくねっていることが少なくないはず。
そういう道を夜に撮影すると、場合によっては川が蘇っているように見えるようです。
川の幽霊みたいなものだろか?ちょっと幻想的でした。
そういえば、宮崎駿作品『千と千尋の神隠し』では川の神様が登場しますよね。
なんとなくだけど、暗渠にも神様がいる気がします。
きっと川の神様とバトンタッチするのでしょう。
というわけで、今回はこれにて。