「太陽くん、この世の中は繊細さのない場所だよ」
(辻村深月『ハケンアニメ!』マガジンハウス文庫 より)
こんにちは。繊細さを拾ってますか?野村です。
冒頭の引用は、主人公の一人が自分と似た境遇の子どもにかけた言葉。
とっても優しいシーンです。
この主人公が作ったアニメを見てみたい、と本気で思ったもんだ。
「ひとりでできる楽しみ」に生かされる
というわけで、辻村深月が2014年に発表した小説『ハケンアニメ! (マガジンハウス文庫)』を読みました。
この小説、章ごとに主人公が変わります。
アニメ業界で働く3人の女性(プロデューサー、監督、原画)にスポットをあてる形式。
群像劇というのかな?よくわからない。
主人公たちをはじめ、主要人物は仕事にそれぞれのポリシーを持ってます。
悪人は登場しません。
いや、1章に登場した女子アナは悪役に近いのか。
トークショー形式での記者会見で、イケメン監督の相手役を務めるのだけど、どうも要領が得ない。
世間は、わかりやすさを求めています。
わかりやすく括られたものは、繊細さを欠きます。
そんな「世間の代表」としての役割を担い、物語に立ち現れるのが、この女子アナ。
アニメでもアイドルでも何でもいいけど、「ひとりでできる楽しみ」に生かされた経験があれば、彼女と対峙するイケメン監督の呆れや苛立ちが他人事に感じられないはず。
このシーンだけ読んでも価値があると思いますよ。
立ち読みするなら125ページからどうぞ。
もちろん、そうじゃない人にもお薦めです。
愛情を存分に注げる仕事を持っている、もしくは、そんな仕事に憧れているのであれば響くこと間違い無し。
てなわけで今回はこれにて。