占いの道具である前に「読み物」(井上教子『タロットの歴史』)

頂上の座に王として座する者こそ墜落に心するがいい、
なぜなら、車輪の下には(滅ぼされたトロイアの女王)ヘクバの名が読めるのだ。
(オルフ作曲『カルミナ・ブラーナ』呉茂一・訳 より)

こんにちは。運命に引き倒されてますか?野村です。

ヘッセ『車輪の下』の中に「そうじゃないと車輪の下じきになるからね」というセリフがあります。
脈絡なく出た「車輪」という言葉が不思議で、慣用句なのかな?程度に考えて心に止めてました。

そんなとき、たまたま図書館で手にとって開いたページが今回のアイキャッチ画像。
車輪の下じきになってる爺さん!

居てもたってもいられず、借りてきて丸一日かけて読み倒しましたよ。

普遍的な思想を表現

というわけで、今回紹介するのは井上教子『タロットの歴史―西洋文化史から図像を読み解く』です。

占い方については書かれていません。
カードたちの遍歴を西洋史にからめて解説されている本です。
タロットを制作する上で参考にしたであろう図版も多く掲載されていて、しかもオールカラー。

なんだか固定観念が一掃されましたよ。
タロットは、占いの道具である前に「読み物」なんだろな。

あと「様々な神話・宗教から題材を寄せ集めた画集」という認識だったけど、どうやら違う。
それらはあくまで借り物。普遍的な思想を表現することを目指しているように思えます。
今の自分には「マンダラをバラしたもの」といったイメージが近いかも。

「車輪の下」のニュアンス

アイキャッチ画像は「運命の輪」。現存するカードで最古(15世紀)の部類の中からの1枚です。

「地位や権力を誇っていても、いずれは流転する」ということを風刺したものらしい。
同じモチーフは、ドイツの歌集『カルミナ・ブラーナ』(13世紀)にもあると知りました。

どうやら古くからの慣用句っぽい。日本でいえば「驕れるものは久しからず」でよさそう。

ともかく「車輪の下」って、単に「轢き倒される」のではなく「没落する」というニュアンスが強いと考えることにしました。
ちょっとスッキリ。

てなわけで今回はこれにて。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

野村 野村のプロフィール
枕は高いほうがいい。高いほうが本を読みやすいのですよ。なので広めのタオルケットを何重にも折りたたんでその上に枕を載せてその上に頭を載せてたりする。