金森修『ゴーレムの生命論』で考える、自分の中の「人間未満」

人間は泥でできている 肉や血でできている
俺の背骨は強いぜ 16tを積んだんだ
(憂歌団「16t」歌詞・尾関真 より)

こんにちは。背骨は丈夫ですか?野村です。

中学生の時、憂歌団の「16t」という曲を聴いて「妙な歌詞だな」と思ったものです。
今聴いても妙だと思います。だけど耳から離れない。

意欲的な新書

今回紹介するのは、金森修『ゴーレムの生命論 (平凡社新書)』(平凡社新書)です。

狭義のゴーレムはもちろん、人造生命やロボットに至るまで「ゴーレム的なもの」について考える本。
魔術に関する文献をひもとき、文学、映画を考察し、最終的には生命工学・生命倫理まで論じるという意欲的な内容です。

ゴーレム的なものを見ていないだろうか?

ゴーレムというのは、ユダヤ教の伝承に登場する生きた人形です。
寡黙で従順、知能は低く、魂を持たない「人間未満」の怪物。
材料は土。役目を終えたら原料に戻される運命にあります。

ちなみに人間も土でできてます。
土から人類が生まれた神話を数えたらキリがない。
メソポタミア、ギリシャ、マリ共和国のドゴン族、などなど。
その中でも代表的なのが旧約聖書です。

あなたは顔に汗してパンを食べ、ついに土に帰る、
あなたは土から取られたのだから。
あなたは、ちりだから、ちりに帰る
(口語訳旧約聖書 創世記 3:19)

創造主が自分に似せて土でかたどり、鼻から息を吹き込んでできたのが人類の祖。
アダムの語源はアダマ。ヘブライ語で「地面」を指す言葉。
人類の祖を指す固有名詞であると同時に、人類を指す一般名詞でもある。

とにかく人類は被造物、神から見れば劣った存在です。
ならばゴーレムも人より劣っている……いや、ちょっとまて。

「劣っている」って何だろう?

能力によって他者を線引きし、その中にゴーレム的なものを見ていないだろうか?
また、自己の中の切り捨てたい部分にゴーレム的なものを感じているのでは?

土人形の話題のはずが、あらぬ方向で考えさせられました。

てなわけで今回はこれにて。

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野村 野村のプロフィール
枕は高いほうがいい。高いほうが本を読みやすいのですよ。なので広めのタオルケットを何重にも折りたたんでその上に枕を載せてその上に頭を載せてたりする。