小山慶太『星はまたたき物語は始まる』を読みました

美という公約数によって、芸術と数学、そして数学を表現手段とする科学は、こうして括られたのである。
(小山慶太『星はまたたき物語は始まる』春秋社 より)

こんにちは。役割分担してますか?野村です。

分担にこだわりすぎると見逃してしまうことがあったりします。
分野が違っても、共通するものを見出すことも大切ですな。

ロマンとドラマにあふれている

今回紹介するのは、小山慶太『星はまたたき物語は始まる―科学と文学の出逢い』(春秋社)です。

サブタイトルから想像して「フィクション作品から題材をとって科学的に検証する」といった内容を予想していました。
でも、読んでみるとずいぶんと違う。

そんな予想をしたのは、自覚なく科学と物語の間に線引をしていたから。
「役割分担すべき」という先入観のせいで、ありがちな発想しかできなかった。

この本の趣旨は明快です。
科学も物語もロマンとドラマにあふれている。だから同時に語る。

現実にあった『あらしのよるに』

「心」をテーマにした第4章が印象的。
オオカミとヤギの友情を描いた絵本『あらしのよるに』を引用し、それに似た事例を紹介されています。

それは、野生の雌ライオンが、オリックス(ウシ科の動物)の子供を献身的に養育していたというもの。
その一部始終は、BBC制作の記録映画『Heart of Lioness』に収められています。

このライオンについては、Wikipediaにも記事があります。

結局オリックスの子供は他のライオンに食べられてしまいます。
そのときの、恐怖と混乱で呆然と立ち尽くす雌ライオンの姿をカメラはとらえていました。
著者の目には、それが「悲しみに打ちひしがれる母親の表情」として映ったそうです。

食欲に勝る愛情が野生動物から観測されたことは、心の科学に一石を投じるかも知れないですね。

てなわけで今回はこれにて。

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野村 野村のプロフィール
枕は高いほうがいい。高いほうが本を読みやすいのですよ。なので広めのタオルケットを何重にも折りたたんでその上に枕を載せてその上に頭を載せてたりする。